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7番劇場

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ハンバーグのパラドクス

 先日30歳になった。お祝いの言葉を家族や友人からいただき、近所でケーキを買って妻と食べた。しかしどうも誕生日を迎えた気がしない。決して30代に入ったことがショックな訳ではない。妻や同級生の多くは先に30歳を迎えている。自分はそこに追いついただけ。妻からのプレゼントはまだもらっていないが、交際時から誕生日プレゼントは一緒に買いに行く方式で、誕生日までに買っていないことがほとんどだ。理由は簡単で、毎年誕生日に妻に作ってもらっているハンバーグをまだ食べられていないことにある。交際するようになって初めて迎えた誕生日から恒例となっているハンバーグ。そのハンバーグをまだ食べられていない。例年ならもうとっくに食べている時期だ。誕生日当日が平日だったとしても次の週末には食べている。

 しかしもう何週間も経つのにまだ作ってもらえていない。週末と言えど彼女は仕事で時間が取れないこともあった。土曜日に出勤し、日曜日には家で仕事をしていた。そう、これは仕事なので仕方ない。ある週末には彼女は実家に帰った。元々彼女の実家方面に二人で遊びに行く予定でついでに帰るとのことだったが、結局遊びに行かなかったのに帰った。まあ、家族の仲が良いのはいいことだ。そしてこの週末、彼女は家族で旅行に行った。もうここまで来ると、まるで狙って予定を入れているかのようにも見える。幸い次の週末には予定がないはずだ。少なくとも今知っている限りでは。

 しかしここで手作りハンバーグにライバルが現れる。年末にふるさと納税で彼女が申し込んだ北海道の冷凍ハンバーグだ。「発送のお知らせ来たし誕生日はあれで良いんじゃない?」と彼女は言い残して旅行に行った。それが先程届いた。まずい。このままでは本当に冷凍ハンバーグで済ませられる可能性がある。彼女は合理主義だ。作らなくても冷凍庫にハンバーグが眠っているのであればわざわざ作らない。3月いっぱいが賞味期限で10個もある。二人で毎週食べても5週間かかる。それに加えてハンバーグを作ってもらうとなるともう3月末まで毎週ハンバーグを食べることになってしまう。嬉しい。けど、嬉しくない。ハンバーグ過多だ。

 そもそも交際を始めて以降ハンバーグを食べることが減ったのが問題だ。「誕生日の特別感を出すために作るのは年一回にしよう。」確かに待ち遠しい。ハンバーグを食べていないと年を取った気がしないくらいに飢えている。外で食べることもあるがそう多くあるわけではない。作ってもらうことに固執しなければ、ハンバーグくらいなら自分一人でも作れる。が、それはなんだか裏技を使っているようでしたくない。普段よくするように少なくとも二人で作りたい。しかしそれはできない。特別感がなくなるからだ。これなら一番好きなものはロールキャベルとでも言っておけば良かった。嬉しさは減るけれども。好きなものだからこそ自宅では年に一回しか食べられない。そんな矛盾を抱えながら次の週末を待っている。